1. はじめに
1.1 背景
近年、製造業の工場がサイバー攻撃の標的となるケースが増えています。特に、システムを人質に取り身代金を要求するランサムウェアは、生産ラインの停止や機密情報の漏洩など、深刻な被害をもたらします。こうした脅威から工場を守るためには、組織全体で取り組むセキュリティポリシーの策定が不可欠です。
1.2 記事の目的
本記事では、工場が取り組むべきセキュリティポリシーの基本を解説します。また、制御システム向けセキュリティの国際規格であるIEC62443でも、セキュリティポリシーの策定が重要視されている点に触れます。ランサムウェアから工場を守るための第一歩として、セキュリティポリシーの必要性とその構築方法を分かりやすくお伝えします。
次回の記事では、より具体的な工場向けのセキュリティ運用ルールについて解説します。
2. セキュリティポリシーとは何か?

セキュリティポリシーってなんだろう?
2.1 定義
セキュリティポリシーとは、組織全体のセキュリティに関する基本方針を示す文書です。これは、情報やシステムをどのように保護するか、そのために従業員が守るべき基準や行動指針を明確にします。
2.2 役割と重要性
- 組織全体の方向性を統一:セキュリティポリシーは、全従業員が同じ目標に向かって取り組むための基盤となります。
- リスクの最小化:明確な方針があれば、サイバー攻撃に対する防御策が統一され、リスクを効果的に低減できます。
- 法規制への対応:情報セキュリティに関する法律や規制を遵守するための基礎となります。
2.3 IEC62443とセキュリティポリシー
IEC62443は、制御システム向けのセキュリティ国際規格であり、工場やプラントの安全を守るための指針が示されています。この規格でも、セキュリティポリシーの策定が重要なステップとして挙げられており、国際的にもその必要性が認められています。
3. ランサムウェアから工場を守るためのセキュリティポリシーの基本
3.1 ランサムウェアの脅威
ランサムウェアは、システム内のデータを暗号化し、復旧のために身代金を要求するマルウェアです。工場がランサムウェアに感染すると、生産ラインの停止や機密情報の漏洩といった重大な被害が発生します。
- 生産停止のリスク:設備が制御不能になり、生産が停止。
- 情報漏洩の危険性:設計図や顧客情報などが外部に流出。
3.2 セキュリティポリシーでランサムウェア対策
セキュリティポリシーは、ランサムウェアから工場を守るための基本的な枠組みを提供します。具体的な対策を明文化し、全従業員が徹底することで、感染リスクを大幅に低減できます。

セキュリティポリシーの策定は重要なんだね!ではどうやって作るんだろう?
4. セキュリティポリシーの基本構成
4.1 組織のセキュリティ目標を定める
まず、組織として何を守りたいのか、明確なセキュリティ目標を設定します。
- 例:生産ラインの安定稼働を維持し、サイバー攻撃による停止を防ぐ。
4.2 セキュリティポリシーの主要要素
セキュリティポリシーには、以下の要素を含めることが重要です。
- 機密性(Confidentiality):情報が不正にアクセスされないように保護する。
- 完全性(Integrity):情報が正確で、改ざんされていない状態を維持する。
- 可用性(Availability):必要なときにシステムや情報にアクセスできる状態を保つ。
4.3 工場特有の考慮点
- 安全性(Safety):機器の誤動作が人命に関わるリスクを防ぐ。
- 連続稼働の重要性:生産ラインの停止は大きな損失につながるため、可用性が特に重要。
5. セキュリティポリシーを構築するためのステップ
ステップ1:現状分析
- 資産の把握:工場内の設備やシステム、ネットワーク構成をリストアップ。
- リスク評価:どの部分が脆弱で、どのようなリスクがあるかを評価。
ステップ2:目標設定
- セキュリティ目標の明確化:何を守りたいのか、具体的に定める。
- 優先順位の設定:リスクの大きさや影響度に応じて対策の優先順位を決定。
ステップ3:ポリシー内容の策定
- アクセス制御:誰が何にアクセスできるかを定める。
- データ管理:データの保存場所、バックアップ方法、暗号化の有無など。
- 更新とメンテナンス:ソフトウェアやシステムの更新手順と頻度を明記。
ステップ4:従業員への周知と教育
- ポリシーの共有:全従業員にセキュリティポリシーを周知。
- 教育プログラムの実施:定期的なセキュリティ教育や訓練を行う。
ステップ5:定期的な見直し
- モニタリング:ポリシーの遵守状況を監視。
- アップデート:新たな脅威や技術の変化に対応してポリシーを更新。
6. セキュリティポリシー策定時の注意点
6.1 現場の声を反映する
従業員の意見を取り入れる:現場での実際の運用を理解し、無理のないポリシーを作成。
6.2 過度な制限を避ける
業務効率とのバランス:セキュリティ強化と業務効率を両立させる。
6.3 法規制の遵守
関連法規の確認:個人情報保護法や労働基準法など、関連する法規制を遵守。
7. 次回予告:具体的なセキュリティルールの策定へ
次回の記事では、より具体的な工場向けのセキュリティルールについて詳しく説明します。セキュリティポリシーを実践に移すためのステップとして、ぜひご期待ください。
🔜 次回:「工場で今すぐ実践できるセキュリティ運用ルール5選」
8. まとめ
8.1 ポリシー策定の重要性
- 統一された方針がリスクを低減:セキュリティポリシーは組織全体のセキュリティ対策を統一し、リスクを効果的に低減します。
- 国際規格でも重要視:IEC62443などの国際規格でも、セキュリティポリシーの策定が推奨されています。
8.2 今すぐ始めるべき理由
- 脅威は増加傾向:ランサムウェアなどのサイバー攻撃は年々巧妙化しています。
- 初動が肝心:早めの対策が被害を最小限に抑えます。
9. 参考資料・リンク
- 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」
https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/ - IPA「産業サイバーセキュリティセンター」
https://www.ipa.go.jp/security/ciot/index.html
ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。



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