1. はじめに
1.1 背景
近年、製造業ではデジタル化やIoT(モノのインターネット)の導入が急速に進んでいます。これにより、生産効率の向上やコスト削減が期待されています。しかし、その一方でサイバー攻撃のリスクも増大しています。特に、OT(Operational Technology)とIT(Information Technology)の違いを理解し、それぞれに適したセキュリティ対策を講じることが重要です。
1.2 目的
本記事では、OTとITの基本的な違いをわかりやすく解説します。また、製造業が押さえるべきセキュリティの基礎について、具体的な事例や業界ごとの特徴を交えながら紹介します。OTセキュリティに詳しくない方でも理解しやすい内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
2. OTとITの基本的な違い
2.1 OT(Operational Technology)とは

OT(オペレーショナルテクノロジー)は、工場やプラントなどで使用される生産設備や制御システムを指します。具体的には、機械や設備を監視・制御し、生産プロセスを管理するための技術です。
OTの種類
OTは大きく以下の3つに分類されます。
- FA(Factory Automation):
- 概要:製造業における自動化システム。生産ラインや機械の自動制御を行います。
- システム構成:PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、ロボット、センサーなど。
- 業界ごとの特徴:自動車、電子機器、食品など幅広い業界で活用されています。
- PA(Process Automation):
- 概要:化学プラントや石油精製などのプロセス産業での自動化システム。連続的なプロセスを制御します。
- システム構成:DCS(分散制御システム)、SCADA(監視制御データ収集システム)など。
- 業界ごとの特徴:石油化学、製薬、食品飲料などの業界で重要です。
- BA(Building Automation):
- 概要:ビルや施設の環境管理システム。空調、照明、セキュリティなどを自動制御します。
- システム構成:HVAC(空調換気設備)、アクセス制御システム、エネルギー管理システムなど。
- 業界ごとの特徴:オフィスビル、商業施設、病院などの建築物で利用されています。
2.2 IT(Information Technology)とは

IT(インフォメーションテクノロジー)は、情報の処理や管理を行う技術です。企業の業務効率化や情報共有を支援するシステムを指します。
具体的な例
- ハードウェア:サーバー、パソコン、ネットワーク機器など。
- ソフトウェア:業務アプリケーション(ERP、CRM)、メールソフト、データベース管理システムなど。
2.3 OTとITの主な違い
| 項目 | OT | IT |
|---|---|---|
| 目的 | 物理的なプロセスの制御・監視 | 情報の処理・管理 |
| 稼働環境 | 24時間連続稼働、リアルタイム性重視 | 柔軟なメンテナンスが可能 |
| 更新頻度 | 長期間の安定稼働が求められ、更新頻度は低い | 定期的なアップデートやパッチ適用 |
| セキュリティ優先度 | 可用性(Availability)が最重要 | 機密性(Confidentiality)が重要 |
3. OTとITが交わるポイントとセキュリティリスク
3.1 デジタル化によるOTとITの融合
製造業では、生産効率の向上や品質改善のために、OTとITを連携させる動きが加速しています。
例えば、生産設備の稼働データをITシステムで分析し、予知保全や品質向上に役立てるなどです。
3.2 OTとITの融合がもたらすセキュリティリスク
- 攻撃対象の拡大:OTシステムが外部ネットワークと接続されることで、サイバー攻撃のリスクが増大します。
- 脆弱性の露呈:長期間更新されていないOT機器が最新のサイバー脅威に対処できず、脆弱性が狙われる可能性があります。
3.3 具体的な被害事例
- ランサムウェアによる生産ラインの停止:ウイルス感染により機器が制御不能となり、生産が止まってしまうケース。
- 遠隔操作による機器の誤動作:不正アクセスにより機器が勝手に操作され、製品の品質に影響を及ぼす。
- データ漏洩による知的財産の流出:製造ノウハウや設計図が外部に漏れ、競合他社に流出する。
4. 製造業が押さえるべきセキュリティの基礎
4.1 セキュリティの基本原則
セキュリティの基本原則として、以下の3つが挙げられます。サイバー攻撃によって、3つのうちいづれかが阻害されるとセキュリティインシデント(事業被害)が発生してしまいます。
- 可用性(Availability):必要なときにシステムや情報にアクセスできる状態を保つこと。(被害例:生産ラインの停止)
- 完全性(Integrity):情報が不正に改ざんされないように維持すること。(被害例:レシピの改ざん)
- 機密性(Confidentiality):情報が許可されていない人にアクセスされないように保護すること。(被害例:レシピの漏洩)
業界ごとのセキュリティ優先度
セキュリティ対策を検討するうえで、自社がどのようなリスクに対するセキュリティ対策を実施するのか明確になっていると良いです。業界や生産ラインごとに重要視すべきセキュリティ要素は異なる場合があります。以下はその例です。
- 一般的な製造業:可用性が最も重要視されます。生産ラインの停止は大きな損失につながるためです。
- 食品・飲料業界:可用性に加えて完全性も非常に重要です。レシピの改ざんは製品の品質や安全性に直結します。
- 防衛産業:機密性が最重要。製造機密や技術情報の漏洩は国家安全保障に関わります。
4.2 OTセキュリティで考慮すべき追加の観点
OTセキュリティでは、情報セキュリティの基本原則に加えて、以下の観点も重要です。
- 安全性(Safety):システムや機器の誤作動が人命や環境に影響を及ぼさないようにすること。
- 環境保全(Environment):機器の故障や誤作動による環境汚染を防止すること。
- 健康(Health):従業員や消費者の健康に悪影響を及ぼさないようにすること。
4.3 製造業が直面するセキュリティの課題と対策
4.3.1 レガシーシステムの脆弱性
課題:古い設備やシステムは、最新のセキュリティパッチが適用できない場合があります。
対策:
- セグメント化:ネットワークを分割し、リスクの高いシステムを隔離。
- 監視の強化:異常な動きを早期に検知するための監視ツールを導入。
4.3.2 人的ミスによるセキュリティリスク
課題:従業員の誤操作や不注意がセキュリティインシデントを引き起こす可能性があります。
対策:
- 定期的な教育・訓練:セキュリティ意識を高めるための研修を実施。
- 明確なポリシーの策定:セキュリティに関する社内ルールを明文化し、徹底。
4.3.3 サプライチェーン全体のリスク
課題:取引先やパートナー企業のセキュリティ対策が不十分だと、自社にもリスクが及びます。
対策:
- セキュリティ基準の共有:取引先にも自社のセキュリティ基準を提示し、遵守を求める。
- 定期的な評価・監査:サプライチェーン全体のセキュリティ状況をチェック。
4.4 具体的なセキュリティ対策の例
ネットワークの分離とセグメント化
説明:OTネットワークとITネットワークを物理的・論理的に分離し、不必要な通信を制限します。
効果:攻撃の拡大を防ぎ、リスクを最小限に抑えます。
アクセス制御と認証強化
説明:権限管理を徹底し、必要な人だけがシステムや機器にアクセスできるようにします。
多要素認証の導入:パスワードに加え、生体認証やワンタイムパスコードを使用。
効果:不正アクセスを防止し、内部からの情報漏洩リスクを低減します。
セキュリティパッチと更新管理
説明:定期的にシステムや機器のソフトウェアを更新し、脆弱性を解消します。
注意点:更新作業は生産に影響を与えないよう、計画的に実施します。
効果:最新の脅威に対応できるようになり、セキュリティレベルが向上します。
従業員教育と意識向上
説明:サイバー攻撃の手口や対策を従業員に周知し、セキュリティ意識を高めます。
方法:
- 研修やワークショップの開催
- 模擬フィッシングメール訓練
効果:人的ミスによるセキュリティインシデントを減少させます。
5. まとめ
5.1 主要ポイントの振り返り
- OTとITの違いを理解し、それぞれに適したセキュリティ対策が必要。
- セキュリティの基本原則に加え、安全性、環境保全、健康の観点も重要。
- 業界ごとの特徴を踏まえたセキュリティ対策が求められる。
5.2 次のステップ
- 現状評価:自社のOTとIT環境を見直し、リスクを把握しましょう。
- 対策の実施:基本的なセキュリティ対策から始め、継続的に改善していきましょう。
- 情報収集:最新のセキュリティ動向を把握し、適切な対策を検討。
5.3 読者へのメッセージ
セキュリティ対策は一度きりではなく、継続的な取り組みが必要です。私たちウィズハッカーは、皆様のセキュリティ強化を全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
6. 参考資料・リンク
6.1 公的機関のガイドライン
- 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」
https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/ - IPA「制御システムのセキュリティ」
https://www.ipa.go.jp/security/controlsystem/index.html
この記事が皆様のセキュリティ対策の一助となれば幸いです。安全な生産環境を守るために、今すぐ行動を起こしましょう。

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