VPN vs ゼロトラスト|工場の設備に最適なリモートアクセスの選択肢

OTセキュリティ基礎知識

工場や製造業の現場では、リモートアクセスの導入が進む一方で、サイバー攻撃の標的となるケースが増えています。
特に、VPN(仮想プライベートネットワーク)ルーターのパッチ未適用による脆弱性を突いた不正侵入の被害が多発しています。

このような背景から、従来のVPNに代わる新たなソリューションとして、ゼロトラスト型のリモートアクセスが注目されています。本記事では、VPNとゼロトラストの違いを解説し、工場に最適なリモートアクセスの選択肢を考えます。

1. 工場のリモートアクセスが狙われる理由

1-1. 増加するサイバー攻撃と工場の脆弱性

近年、工場などのOT(Operational Technology)環境がサイバー攻撃のターゲットす とになっています。その理由は以下の通りです:

  • VPNルーターのパッチ未適用による脆弱性の悪用
  • リモートアクセス用の認証情報の漏えい(フィッシング攻撃など)
  • 工場のIT/OT担当者のリソース不足により、適切な管理が困難
  • 制御システム(SCADAやPLC)のセキュリティ対策の遅れ

1-2. 実際に発生したVPNの脆弱性を悪用した攻撃事例

最近では、VPN機器の脆弱性を突いた不正侵入が多発しています。以下は、実際に発生した事例の一例です:

【事例1】 VPNのパッチ未適用による不正侵入

某製造業の工場で使用されていたVPNルーターにパッチが適用されていなかったため、攻撃者が既知の脆弱性を利用してネットワークに侵入。その結果、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)の設定が改ざんされ、製造プロセスに影響を与えた。

【事例2】 フィッシング攻撃によるVPNの認証情報窃取

工場のリモートワーク環境で使用されていたVPNアカウントが、従業員を狙ったフィッシング攻撃で盗まれた認証情報を使って不正ログインされる被害が発生。ネットワーク内部に侵入された結果、機密データの流出につながった。

2. リモートアクセスに求められるセキュリティ要件

2-1. NISTやIEC62443に基づくリモートアクセスの要件

工場のリモートアクセスを安全に運用するために、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)やIEC62443(産業用制御システムの国際標準)が示すガイドラインを参考に、求められるセキュリティ要件を整理しました。

セキュリティ要件 内容
多要素認証(MFA) リモートアクセス時にパスワードのみでなく、生体認証やワンタイムパスワード(OTP)を要求する。
最小権限の原則 アクセスできる範囲を最小限に制限し、不必要なリソースへの接続を禁止する。
通信の暗号化 すべての通信をAES-256やTLS1.3などの強力な暗号化技術で保護する。
リアルタイム監視 リモートアクセスのログを記録し、不審なアクセスを即座に検知する。
ゼロトラストアーキテクチャ 「誰も信用しない」という前提で、すべての接続を認証・検証し、アクセスを管理する。

2-2. 従来のVPNとゼロトラストの違い

リモートアクセスの手法として、従来のVPNとゼロトラストアーキテクチャの違いを整理すると、以下のようになります。

比較項目 VPN ゼロトラスト
アクセス制御 ネットワーク単位でアクセス許可 ユーザー単位で細かくアクセス管理
セキュリティレベル 認証後は全リソースにアクセス可能 都度認証し、必要なリソースのみに接続可能
運用の容易さ ルール設定が複雑 一元管理しやすい

このように、ゼロトラスト型のリモートアクセスは、セキュリティが強化されるだけでなく、運用の手間も減らせるメリットがあります。

3. ゼロトラスト型リモートアクセスのメリット

3-1. ゼロトラストとは?

ゼロトラスト(Zero Trust)とは、「誰も信用しない」という前提のもと、すべてのアクセスを検証し、最小限の権限でのみ許可するセキュリティモデルです。
従来のVPNでは一度認証すれば広範囲のリソースにアクセスできるのに対し、ゼロトラストでは都度認証を行い、必要最小限のリソースにのみアクセス可能とすることで、セキュリティを強化します。

3-2. ゼロトラストの主要なメリット

ゼロトラスト型のリモートアクセスを導入することで、以下のようなメリットがあります。

  • ① VPNの脆弱性を回避できる
    VPNは、適切なパッチ適用がされていないと脆弱性を突かれるリスクがあります。一方でゼロトラストはVPNを不要とし、より強固なセキュリティを実現します。
  • ② 必要最小限のアクセス管理が可能
    ゼロトラストでは、「ユーザーごと」「デバイスごと」「アクティビティごと」に細かくアクセス制御ができるため、万が一の侵害が起こっても被害を最小限に抑えられます。
  • ③ 運用負担の軽減
    VPNは、接続設定やポリシー管理が複雑であるため運用の負担が大きいですが、ゼロトラスト型ソリューションは、管理の一元化が可能で運用が容易になります。
  • ④ 柔軟なアクセス環境を実現
    ゼロトラストでは、従業員がどこからでも安全に作業できるため、リモートワークの促進や、外部のパートナーとのコラボレーションがしやすくなります。

4. 工場向けゼロトラスト型リモートアクセス「Dispel」とは?

ゼロトラスト型リモートアクセスの例としてDispelというものがありました。三菱電機のウェブサイトでも紹介されています。

三菱電機OTセキュリティソリューション ゼロトラストリモートアクセスDispel

4-1. Dispelの概要

ゼロトラスト型のリモートアクセスソリューションとして、近年注目を集めているのが「Dispel」です。
Dispelは、VPNの代替として、動的ネットワークの分離と匿名化技術を活用し、より安全なリモートアクセス環境を提供します。

4-2. Dispelの主な特徴

Dispelが持つ主なセキュリティ機能を以下の表にまとめました。

機能 詳細
動的なIPアドレス変更 接続ごとにIPアドレスをランダムに変更し、攻撃者に追跡されにくい環境を構築。
ゼロトラストアーキテクチャ ユーザーごとに厳格なアクセス制御を適用し、不正アクセスを防止。
エンドツーエンド暗号化 AES-256などの強力な暗号化技術を活用し、データの盗聴を防ぐ。
アクセスのログ記録と監査 リアルタイムでアクセス状況を監視し、不審なアクセスを検知・記録。
迅速な導入 クラウドベースのシステムのため、数日以内にセットアップ可能。

4-3. Dispelの導入によるメリット

Dispelを導入することで、以下のような利点があります。

  • ① セキュリティ強化
    ゼロトラストモデルと動的IP技術により、VPNよりも強固なセキュリティを提供。
  • ② IT運用の負担軽減
    VPNの複雑な設定管理を不要とし、シンプルな管理で運用可能。
  • ③ コンプライアンス対応
    NISTやIEC62443の要件に準拠したセキュリティ基準を満たす。
  • ④ 迅速なセットアップ
    クラウド上で動作するため、最小限の構成で短期間に導入が可能。

5. まとめ:工場のリモートアクセスにはゼロトラストが最適

従来のVPNは、管理が煩雑であり、脆弱性を突かれやすいという欠点があります。
特に、VPNルーターのパッチ未適用が原因で発生する不正侵入のリスクが高まっています。

一方で、ゼロトラスト型のリモートアクセスは、「必要最小限のアクセス制御」「都度認証」「リアルタイム監視」などのセキュリティ機能を備え、より安全な環境を提供します。

特に、Dispelのようなゼロトラスト型ソリューションを導入することで、工場のリモートアクセスをより安全かつ効率的に運用できるようになります。

参考資料・リンク

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