2024年末から2025年始にかけて、JALやみずほ銀行、NTTドコモなど日本国内の複数の大手企業がDDoS攻撃を受け、大きな影響を受けたことが報じられました。DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃は、大量のリクエストでサーバーやネットワークを圧迫し、サービスを停止させる攻撃手法です。
こうした攻撃は、ITシステムだけでなく、OT(運用技術)環境にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。本記事では、DDoS攻撃の基本的な仕組みを解説し、特にOTセキュリティにおけるリスクと対策について詳しく説明します。
1. DDoS攻撃とは?
1.1 DDoS攻撃の概要
DDoS攻撃とは、複数のデバイス(ボットネット)から標的に大量のトラフィックを送り込み、ネットワークやシステムを過負荷状態にして正常なサービス提供を妨げる攻撃手法です。近年、IoTデバイスがDDoS攻撃の踏み台として利用されるケースが増えています。
1.2 攻撃が増加する理由
- 休暇シーズンの脆弱性: 年末年始などの人員が少ない期間を狙った攻撃が増加。
- ボットネット活動の活発化: ワイヤレスルータやIPカメラなどの脆弱なIoTデバイスが攻撃に利用される。
2. OTセキュリティとDDoS攻撃の関係
2.1 ITとOTの違い
IT(情報技術)とOT(運用技術)はそれぞれ異なる役割を持ちます。ITは主に情報処理や管理を目的とし、OTは製造業やインフラなどの物理的なプロセスを制御する技術です。
ITとOTの違いに関する記事はこちら↓

DDoS攻撃はIT環境だけでなく、OT環境にも深刻な影響を及ぼします。特に、OT環境では以下のリスクが考えられます。
- 生産ラインの停止: 攻撃により機器が停止し、製造工程が中断。
- 機器への負荷: 過剰なトラフィックが機器の故障を引き起こす。
2.2 ボットネット活動の分析結果
トレンドマイクロの調査によると、DDoS攻撃の通信元として使用されるデバイスの内訳は以下の通りです。
- ワイヤレスルータ: 80%
- IPカメラ: 15%
これらのデバイスが標的となる理由は、セキュリティ設定が不十分なことが多いためです。特にOT環境では、こうしたIoTデバイスが生産システムと接続されるケースもあり、重大なリスクとなります。
3. 年末年始にOTシステムが狙われる理由
3.1 攻撃者の心理と動機
DDoS攻撃者は、年末年始のように人員が手薄な期間を狙う傾向があります。この時期は以下のような理由から、攻撃が成功しやすくなります。
- セキュリティ対応チームが不在または最小限である。
- ネットワーク監視が通常よりも弱化する。
3.2 リスクシナリオ
具体的には以下のようなシナリオが考えられます。
- 外部委託業者の脆弱性を利用した攻撃。
- メンテナンス中にIoTデバイスを標的とする攻撃。
こうした攻撃を防ぐためには、事前のリスク評価と対策が必要です。
4. OTセキュリティにおけるDDoS攻撃対策
4.1 短期的な対策
DDoS攻撃に対する短期的な対策として、以下のポイントが挙げられます。
- ネットワークセグメント化: ITとOTのネットワークを分離し、攻撃の拡散を防ぐ。
- IoTデバイスのセキュリティ強化: デフォルトパスワードを変更し、ファームウェアを最新状態に保つ。
- 外部アクセスの制限: 不要なリモート接続を遮断し、特定のIPアドレスのみにアクセスを許可。
4.2 中長期的な対策
長期的な視点での防御策は、DDoS攻撃だけでなく、広範なセキュリティリスクにも対応可能です。
- 監視ツールの導入: トラフィックをリアルタイムで監視し、異常を早期に検知する。
- SOC(セキュリティオペレーションセンター)の活用: OT環境に特化した外部監視サービスを利用し、リソース不足を補う。
- セキュリティ教育の実施: 従業員に対して定期的なセキュリティ研修を行い、リスク意識を向上。
4.3 実例を交えた解説
例えば、ある製造業企業では以下の対策を講じた結果、DDoS攻撃のリスクを低減しました。
- ITとOTのネットワークを分離するために専用のファイアウォールを導入。
- 監視ツールを用いて、ネットワークトラフィックの異常を検知する仕組みを構築。
- 従業員向けのセキュリティ研修を定期的に実施。
これにより、生産ラインの停止を未然に防ぎ、業務の継続性を確保しました。
5. 専門家の考察
5.1 データを基にしたコメント
「ボットネットによるDDoS攻撃が増加する中、IoTデバイスが主なターゲットとなっています。特にワイヤレスルータやIPカメラのセキュリティ管理が重要です。」(セキュリティ専門家のコメント)
5.2 推奨される防御モデル
OT環境において、現実的かつ効果的な防御策として以下が挙げられます。
- ディフェンス・イン・デプス(重層防御): ネットワークセグメント化やファイアウォール、内部監視ツールを組み合わせた多層的な防御モデル。
- 最小限アクセスモデル: 必要最小限のアクセス権のみを付与し、リスクを最小化。
- レジリエンスの向上: システムの冗長化や定期的なデータバックアップにより、攻撃後の迅速な復旧を可能にする。
これらの防御モデルは、OT環境の特性を考慮しつつ、導入コストを抑えながら高い効果を発揮します。
6. まとめ
DDoS攻撃は年末年始を含む休暇シーズンに増加し、ITだけでなくOT環境にも重大なリスクをもたらします。特に、IoTデバイスが攻撃の踏み台として利用されるケースが多いため、セキュリティ管理が不可欠です。
本記事で紹介した短期的・中長期的な対策や防御モデルを参考に、OTセキュリティの強化を進めてください。今すぐ取り組むことで、組織全体の安全性と信頼性を高めることができます。
7. 参考資料・リンク
- 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」
- 経済産業省「工場セキュリティガイドライン」
- IPA「産業サイバーセキュリティセンター」
- IPA「IoTのセキュリティ」
- IPA「中小企業向けサイバーセキュリティお助け隊サービス制度」


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